ラーメン屋は原価190円で出せるの?原価率の調整方法と、繁盛させる5つの考え方
はじめまして。
大阪の行列ラーメン店【人類みな麺類】など、6ブランドを運営している松村貴大と申します。
ありがたいことに、ラーメン口コミサイト「ラーメンデータベース」さんでは、全国通算3位を頂いております。(2019年12月時点)
【人類みな麺類】
※2019年12月時点
ラーメン開業を考える中で、「ラーメンの原価(率)」は絶対に知っておきたいですよね。
結論から言ってしまうと、『190円でも出せるしもっと抑えることも可能ではあるが、お客様に満足頂けなければ意味が無い』です。
この記事では、
- ラーメン屋での1杯あたりの原価(原価率)
- 繁盛させるための原価への考え方
- 無駄を省いて原価率を抑える方法
を個人的な経験から説明していきたいと思います。
「お客様に満足頂ける味」が大前提であり、原価は「低ければ良い」というわけでもありません。
このページでは試算により「190円」という数字が出てきますが、あくまでも一つの目安として参考にして下さいね!
ラーメン屋の「原価・原価率」は3つの要素から決まる
原価とは、一杯に掛かっている「食材費」のことを言います。
そして残った利益を「粗利」と言います。
厳密に言えば「原価」とは「売上全体に対する食材費」ですが、これから開業したい方は「一杯に対する原価」を知りたいと思うので、そこから説明します。
粗利も同じく「売上全体から全ての原価を引いて残った利益」を言いますが、分かりやすく「1杯に対する利益」と表現しています。
まず結論から言ってしまうと、原価はどこのお店もおおよそ28%~38%ほどに抑えていると思います。
私が運営している7ブランドでも、いずれもこの範囲です。
後々さらに「人件費」や「家賃」などが引かれるので、原価がこれ以上高いと「最終的な利益」を残しにくいです。(個人的には38%でも厳しい)
この「ラーメン原価」は、大きく
- 麺
- スープ+タレ
- トッピング
の3種類に分けて考えます。
まず麺には、ざっくりと以下のような種類があります。
- 「加水率」による違い
⇒多加水麺と低加水麺
- 「太さ」の違い
⇒細麺と太麺
- 「製法」の違い
⇒ストレート麺と縮れ麺
このように色々と種類があるのですが、いずれであっても麺を仕入れる際は100g(茹でる前)あたり40円程度と思っていて下さい。
通常はラーメン1杯あたり150g程度で提供するため60円ほど。
ただし豚骨ラーメンは120g程度(屋台では100g程度のようです)で提供になることが多いため、48円ほどになると思われます。
※豚骨ラーメンでは安い小麦を使うことも多く、120gを30円ほどで提供することも可能
これは完全な松村の憶測ですが…
細麺の豚骨ラーメンは、スープが良く絡みお腹いっぱいになりやすい点や、「替え玉する文化」から、少なめで提供しているのかなと勝手に考えています。
自家製麺だと安くはなるが…
余談ですが、弊社のように製麺機を入れて自家製麺した場合は原価自体は半額ほどにできます。
ただし
- 製麺機を置く場所の確保
- 導入費用(イニシャルコスト)
- 製麺にかかる人件費・労力
を考えると、杯数がしっかりと出ることを前提に考えないとシンドイですね。
また「セントラルキッチンで製麺する」という場合にも、店舗までの配送費を考慮しなければなりません。
ということで、開業当初は製麺業者から仕入れる方が無難です。
ラーメンのスープは、主に「スープ」+「タレ」に分けて考えます。
出汁を取ったベース(スープ)に、タレを入れることで、一般的に言われる「スープ(完成形)」が出来上がります。
①出汁を取ったベース(スープ)
ラーメンによって出汁を取る食材は変わります。
また、どこまでこだわった食材を使うのかによっても変わりますが、おおよそ以下の通りです。
ラーメンの種類 |
出汁を取る食材 |
原価 |
---|---|---|
醤油ラーメン | 鶏ガラ、豚骨、牛骨など | 50円~ |
塩ラーメン | 鶏ガラ、豚骨、海鮮など | 50円~ |
豚骨ラーメン | 豚骨 | 100円~ |
味噌ラーメン | 豚骨、野菜など | 50円~ |
なおスープ量は300ccくらいを想定しています。
味噌ラーメンは400cc以上で提供するところも多いようですが、弊社ブランドの一つ「ラーメン大戦争」では300ccで提供しており、特に決まりはありません。
これまた完全な松村の憶測ですが…
屋台から生まれた「豚骨ラーメン」は、居酒屋等で飲んだ後に食べることが前提となっており、スープ量が少なめなのかなと。
そして北海道で生まれた「味噌ラーメン」は、寒くてスープを飲む量が多いから400ccを超えるのかなと。
勝手な憶測なので違ったらスミマセン。
②タレ
タレも「醤油ダレ」「塩ダレ」「味噌ダレ」などで変わりますが、おおよそ10~30円ほどです。
チャーシューを炊いたタレを使う店もありますし、厳密には言えませんが、おおよそそれくらいで考えておくと良いでしょう。
①出汁を取ったベース(スープ) + ②タレ
①②を混ぜ合わせて「スープ」の出来上がりです。
つまり、ざっくりですが以下のようになります。
ラーメンの種類 |
①ベースの原価 |
②タレの原価 |
①+②スープの原価 |
---|---|---|---|
醤油 |
50円~ | 10~30円 | 60円~ |
塩 |
50円~ | 60円~ | |
豚骨 |
100円~ | 110円~ | |
味噌 |
50円~ | 60円~ |
結局は「どんなラーメンを作りたいのか」にもよりますので、スープの原価は厳密に出せませんが、ざっくりと上記のように考えておいて下さい。
たとえば味噌ラーメンはブレンドする味噌の数であったり、塩ラーメンは「蟹」を使うなどすると原価が高くなりますので、数字は青天井です。
トッピングも「何を乗せるか」で変わりますが、おおよそ以下の通りです。
ラーメンの種類 |
トッピングの内容 |
原価 |
---|---|---|
醤油 |
煮卵、ネギ、メンマ、チャーシュー、ナルトなど | 70円ほど |
塩 |
||
豚骨 |
メンマ、ネギ、キクラゲ、生姜、ネギ、ゴマなど | 60円ほど |
味噌 |
野菜、チャーシュー、ネギ、メンマなど | 80円ほど |
味噌ラーメンは「野菜」を多く乗せることが多いため、トッピングの原価としては上がりやすいです。
なおトッピングにおいて一番原価が高いのが、一般的には「チャーシュー」です。
原価の問題から、硬くてマズいチャーシューしか乗せられないのであれば、乗せない方がマシだったりします…
「乗せなければならない」という決まりはありません。
ちなみに、弊社のブランドの1つである「人類みな麺類」では、
- チャーシュー
- ネギ
- メンマ
の3種類のトッピングしか乗せておりません。
つまり「トッピングの数に決まりは無く、お客様に満足して頂ければ何でも良い」ということです。
さて、「麺・スープ・トッピング」の原価が出揃ったので、最後に合算してみましょう。
ラーメンの種類 |
①麺 |
②スープ |
③トッピング |
一杯の原価 |
---|---|---|---|---|
醤油 |
60円ほど | 60円~ | 70円ほど | 190円~ |
塩 |
||||
豚骨 |
48円ほど | 110円~ | 60円ほど | 218円~ |
味噌 |
60円ほど | 60円~ | 80円ほど | 200円~ |
原価がザックリと分かったので、このまま「売価」を見てみましょう。
ラーメン屋を開業する際は、
- 原価率:30%
- 人件費:30%
- 家賃:10%
が良いと考えており、私自身も新店舗を出す際は一旦この経費構成をベースに考えています。
一般的にも「原価率は30%前後が良い」と言われていますよね。
つまり、上で出た原価を30%として計算すると、売価は以下の通りになります。
- 醤油・塩ラーメン⇒630円(原価:190円)
- 豚骨ラーメン⇒730円(原価:218円)
- 味噌ラーメン⇒660円(原価:200円)
このように試算する限り、安ければ190円くらいで一杯出すことも可能ということです。
ですが、問題は『それでお客様に満足して頂けるのか?』です。
このあと説明する「原価への考え方」も、合わせてご確認ください。
繁盛させる「原価」への考え方5箇条
繁盛させるためには、「原価」に対して以下の考えを持っておきましょう。
1.まずは「勝算ありき」で考えよ!
上で挙げた額は、あくまでも『これくらいの価格でも最低限のものは提供できますよ』というお話です。
開業を考える際の一つの目安にはなると思いますが、実際に店舗を出す際には、基本的には「コンセプト作り」から始まり
- 今はどんなラーメンが流行りそうなのか?
- その立地では、どんなラーメンがウケるのか?
- 近隣相場はどれくらいの価格で、どれくらいのボリューム感か?
- 他所と比較し、どのような「売り」を作れるのか?
などを総合的に判断して決めていきます。
その結果、たとえば醤油ラーメンの相場が900円であれば、相場にあわせるなら原価は270円(30%の場合)まで引き上げられますよね。
270円であれば、上で挙げた食材よりも良いモノが使えますし、量を増やすという考え方も出来ます。
逆に相場が900円の中、630円(原価190円)で出すのも戦略の一つ。
もちろん「原価30%」という絶対的なルールはありませんので、原価を上げてより他所との差別化を図るのもアリです。
つまり、上の計算で出た「190円」というのは『開業時に原価の目安を知る』という意味では良いですが、あまり意味を持ちません。
あくまでも「勝てる構想」ありきで考えましょう。
卸業者を使うと「肉」に関してはかなり安くなりますが、「野菜」は業務用スーパーの価格と大して変わりません。
そのため、まずは出来る範囲で原価計算してみましょう。
2.原価を下げることに囚われ過ぎないこと
近年は人件費が高騰しているため、必然的に『原価を下げよう』という発想になりがちです。
しかし闇雲に原価率を下げようと食材を見直すと、徐々に商品力が落ちてしまい、気づいた頃には「どこにでもあるラーメン」に成り下がる可能性があります。
『前は美味かったのに、なんか最近味変わったよな…』という経験、皆様もあるかと思います。
もちろん「下げられる部分は下げる」のが基本であり、「原価を下げる方法」は後ほど紹介します。
もしも近隣より高くせざるを得ないのであれば、まずは「良い食材を使っている」などでアピールして差別化を図りましょう。
なお「売り(個性)」を持たせることは、大きな差別化に繋がります。
『ここのラーメンは○○が美味いんだよなぁ』という「売り」を作りましょう。
「美味しいラーメン」を一杯でも多く売ることを第一に考えて下さい。
ラーメン屋は回転率が良いため「利益率の伸びシロ」が大きく、家賃などの「固定費」の割合がどんどん小さくなることを実感できるようになります。
3.他のメニューでも調整できる
「原価を30%にしよう」というのは一つの目標ですが、これはトータルで30%を目指せば良いのです。
メインのラーメン原価が高いのであれば、セットで出るサイドメニューの原価を抑えるなどすればOK。
またラーメンも種類によって原価率が変わるでしょうから、ある程度出る数を把握・計算して、バランスを取りましょう。
4.見せ方でボリュームを演出することも出来る
たとえば「味噌ラーメン」を北海道で食べると、「底が丸い鉢」にスープがたっぷり入って出てきます。
でもスープ量が原因で原価が上がってしまう(それが原因で「売り」を押し出せなくなる)のであれば、「底が丸くない鉢」を使うことで、スープがたっぷり入っていても量自体は減らせますよね。
またトッピングがスープの中に沈み込んでしまうのであれば、沈まないように盛り付けるだけでも見え方は変わります。
さらに、盛り付け方法で人件費を変えることも出来ます。
たとえばチャーシューの切り方を「薄切り」⇒「厚切り」にしたとすると、同量を乗せるにしても、スライサーでの作業量は単純に減ります。
これにより「原価」は落ちていませんが、「人件費」は削れるのです。
5.最初は原価を上げて勝負を仕掛ける!
あくまでも私の考え方ですが、開店当初はお客様が興味を持ってくださるため、原価率を上げてでも「美味しいラーメン」を提供した方が良いです。
原価率を気にして中途半端な味を提供していては、お客様に喜んでもらえるラーメンは作れませんし、リピーターにもなって頂けません。
まずは「お客様が喜んでくれるラーメン」をつくり、そこからメニューを増やしたり、業者との交渉をして利益のバランスを取ります。
あくまでも「お客様の満足度」が大前提。
その上で、このあと説明する「原価を下げる方法」で地道に利益を積み重ねることが出来れば、「頑張って原価を下げたご褒美」として利益を頂く、そんな考えで私はやっております。
原価率を下げる時の3つの視点!
「下げるべき部分(無駄な部分)」はしっかりと把握して、原価率を下げていきましょう。
原価を下げる際には、主に以下の3つの視点から調整します。
もっともシンプルで手っ取り早いのが、「仕入れ価格」そのものを下げる方法です。
やり方としては以下が挙げられます。
- 仕入れ業者と「直接交渉」する
- 仕入れ量を増やすことで、単価を下げてもらう
- 仕入れ業者を変更する
そのほか「生産者から直接仕入れる」という方法もありますが、特別なコネがなければ難しいです…。
ロスも原価率を上げる大きな要因ですので、ロスの削減で原価は下がります。
やり方としては以下が挙げられます。
- メニュー数を減らす
⇒一部のメニューでしか使わない食材はロスになりやすい
- 材料を使い回せるようにメニューを変更する(材料を標準化する)
- 在庫管理を徹底する
- 売上予測の精度を上げ、過剰な仕入れを防止する
「チャーシューの端切れで “チャーシュー丼” を作る」などが一般的ですが、材料は色んなメニューで使えると良いですね。
たとえば『チャーシュー売り切れにより営業終了』などを避けるために、過剰に仕込むお店もあると思います。
一方で「売り切れ」があると希少感が出るほか、店側の在庫管理も楽になりますが、売上的には機会損失になり得ます。
ここは「オーナーの考え」が反映されるので正解はありませんね。
一回に使う量を調整することで、原価を下げることが出来ます。
ただし下手するとお客様離れになり得るため、慎重に行いましょう。
方法としては「メニューの見直し」「材料の量を標準化する」などがあります。
使う量を減らす場合、たとえばチャーシューであれば「枚数を減らしつつも、崩れたチャーシューを変わりに入れる」ことで、ロスを抑えながら量を減らすことも出来ると思います。
また、標準化では「適量」などと曖昧にせず、明確な数値でマニュアル化していきましょう。
「他の経費」や「最終的な利益」も把握しておこう!
このページでは「ラーメン一杯の原価」について解説しましたが、実際には
- 人件費
- 家賃
- その他の経費(光熱費や雑費)
などが掛かり、それらを引いて「最終的な利益」が残ります。
以下のページでは「どれくらい利益が残るのか」「ラーメン屋の利益率が伸びる秘密」を分かりやすく解説していますので、ぜひ合わせてお読み下さい。
>>ラーメン屋はなぜ儲かる?「売上・利益率・経費」を成功してる私が暴露
また以下のページでは「光熱費」について、2店舗のリアルな数値とともに解説しています。
>>ラーメン屋の光熱費(ガス・電気・水道代)を、2店舗の数字を例に解説
まとめ
ラーメンの「原価・原価率」と、繁盛させるための考え方を解説しました。
ただし「ラーメン屋をする」ということは、原価だけを考えていれば良い問題ではありません。
あくまでも「経営」なので、多角的な視点を持つことが大切です。
以下の記事では、「失敗/成功」を分けるポイントを解説していますので、ぜひ合わせてご確認下さい。
>>ラーメン屋開業は儲からない?失敗・成功が決まる11のポイントを解説
※当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。