ラーメン屋の開業資金は1000万円では微妙かも?!現役の行列店オーナーが注意点を解説します。
はじめまして。
大阪の行列ラーメン店【人類みな麺類】など、6ブランドを運営している松村貴大と申します。
ありがたいことに、ラーメン口コミサイト「ラーメンデータベース」さんでは、全国通算3位を頂いております。(2019年12月時点)
【人類みな麺類】
※2019年12月時点
ラーメン屋の開業で、避けては通れない「資金」のお話。
ラーメン開業にはどれくらい資金が必要なんだろう?
「内装工事」とおおざっぱに説明されていることが多いけど、具体的に何にどれくらい掛かるのだろう?
このページでは、そんな「ラーメン開業に掛かる費用」を出来るだけ分かりやすくまとめてみました!

この記事をお読み頂ければ、具体的に
- どんな内装工事があるのか?
- どんな厨房設備が必要なのか?
- 開店前・開店後にそれぞれいくら用意しておくべきか?
がすべて分かるようにまとめました。
開業をお考えの方は、最後までお読み頂けばと思います。
開業資金はいくら必要か?まずは結論から
ラーメン屋を開業するにあたって必要な資金について、まずはこのページの結論から先に述べます。
ずばり…
- 開店までに必要な資金
⇒1000万円〜1600万円(※居抜きなら300万円〜)
- 開店後6か月間の運転資金確保
⇒850〜1000万円
ということで、余裕を持っておおよそ1500〜2500万円見ておくと良いです。
もちろん「店舗の規模」「居抜き物件か否か」「立地」によっても必要資金は大きく変わってくるのですが、ここでは
- 15席ほどの規模(15〜20坪くらい)
- 「大阪の駅近」や「東京の路地一本入ったあたり」
をイメージしており、ざっくりとした数値であることを前提にご覧ください!(家賃に関しては出店希望地の相場を当てはめてお考え下さい)
なお「独自店(自分のブランドを一から立ち上げること)」で開業する場合は特に、開業後に思った通りに売り上げが上がらないことも多い(赤字が続く可能性がある)ので、必ず余裕をもって運転資金を用意しておいた方が良いです。
ちなみに私が「人類みな麺類」を立ち上げる際に用意したお金は、運転資金も含めて1500万円ほど。
一方で知人には「スケルトン物件、開業資金800万円、運転資金確保なし」で開業して、未だに生き残っている方もいますが、一種の「博打」ではあるためオススメはしません…。
「運転資金」の話は後で詳しくお話します。
ではここから、ラーメン屋の開業資金について各項目を解説していきます!
項目 |
内容 |
|
---|---|---|
1 |
物件取得に掛かる費用 |
家賃の6か月〜10か月分くらい |
2 |
内装・外装工事費 |
500〜1000万円 |
3 |
什器費 |
50万円〜 |
4 |
厨房内設備費 |
200〜250万円 |
5 |
食器・調理道具・備品費 |
100万円 |
6 |
開業後6か月分の運転資金 |
850万円〜 |
1.物件取得に掛かる費用
「自分の家の一部」でラーメン屋開業する人以外は、避けて通れないのが「物件取得」。
物件を取得する一連の流れの中に、具体的には「前払い家賃・礼金・仲介手数料・保証金」などが掛かってきます。
ただし大前提として、物件によって「言い回し」が異なる可能性があります。
例)「前払い家賃」が存在しない⇒「保証金」に含めている
前払い家賃
家賃に関しては、当月分を前月に払うのが一般的。
契約時に1〜3か月分を前払いすることが多いです。
保証金・敷金
大家さんが「家賃支払いの滞り」対策のために、予め請求してきます。
目安としては家賃の6か月〜10か月ですが、物件によって異なります。
また「前払い家賃」「敷金」など別の名目で別途請求がある場合は、保証金は家賃1か月分になることもあるでしょう。
礼金
大家さんへのお礼として納めるものであり、相場としては家賃1か月ですが、礼金なしの物件も多いです。
(他の名目に含まれている可能性もあります)
仲介手数料
物件を紹介してくれた不動産会社へ渡す手数料であり、家賃1か月くらいが目安。

上でもお伝えしましたが、物件によって名目(言い回し)が異なる可能性が高いです。
そのためあまり細かいことは気にせずに、物件取得に関する必要資金としては家賃の6か月〜10か月分くらいを想定しておきましょう。
2.内装・外装工事費
ラーメン屋の「内装工事」とは、具体的に挙げると…
- 厨房の区画造り
- 水漏れを防ぐ処理
- スタッフルーム
- トイレ
- 製麺室(製麺する場合)
- エアコンの設置
- 空調
- 壁・天井の張り替え
- 電気・ガス設備
- 配線
- カウンターテーブル
- 固定式のイス設置
などなど色々あります。
居抜き物件であれば200万円ほどで済むこともあるかもしれませんが、内装のこだわり等でも大きくブレがありますので、大体500〜1000万円ほど掛かると考えておきましょう。
なお、例えば「電柱が遠い」というだけで数百万円変動することもあったりと、予期せぬ費用が発生する可能性もあります。
また「外装工事」は塗装・タイル・左官材などによる工事であり、10〜30万円ほど。(表面積で変わる)
内装・外装はもろもろ考慮すると大きくブレてくるため、これらの数字は「超概算」である旨ご承知おき下さい。

「カウンターテーブル」や「固定式のイス設置」を内装工事費に入れましたが、これは業者によっては別枠での請求になる可能性もあります。
便宜上、この後説明する「什器」内でもイスやテーブルについて紹介しています。
3.什器費
食事をするテーブルやイスなどの購入費用。
たとえば15席(カウンター11席・4人掛けテーブル一つ)であれば、イス1脚4万円×15=60万円。
テーブル1卓20万円で考えれば、合計80万円。
このページではカウンターテーブルを「2.内装費」に入れていますが、カウンターテーブルは50〜100万円とざっくり考えておけば良いでしょう。

もちろん4人掛けテーブルやイスは、IKEAやニトリに行けば安いものが揃えられますので、どこまでこだわるかはあなた次第。
15席ほどのお店であれば50万円〜で考えておけば良いでしょう。
4.厨房内設備費
厨房内で必要となる設備費用はざっくりと以下の通り。
※後ほど写真付きで紹介します
設備名 |
費用 |
---|---|
ガステーブル | 20万円 |
鋳物コンロ | 2万円 |
寸胴 | 3万円 |
茹で麺機 | 30万円 |
フライヤー | 10万円 |
餃子焼き機 | 5万円 |
自動食洗器 | 30万円 |
2層シンク | 5万円 |
1層シンク | 3万円 |
縦型冷蔵庫 | 20万円 |
台下冷蔵庫 | 20万円 |
製氷機 | 30万円 |
冷凍ストッカー | 10万円 |
浄水器 | 5万円 |
炊飯ジャー | 5万円 |
合計 | 198万円 |
こちらも超ざっくりとした概算です。
たとえば「寸胴」は炊くスープの種類によって数が増えますが、基本的に最低でも2台は必要。
また15席ほどのお店なら、台下冷蔵庫も2台は必要かと思います。
そのため、あくまで15席ほどのお店を想定するならば200〜250万円ほどで見ておくと良いでしょう。
以下のボタンをクリックすると、各設備をイメージしやすいよう画像を貼付しております。
\ クリック! /
ガステーブル
いわゆる「ガスコンロ」のことであり、口数によって値段は変わります。
写真は3口の物。
鋳物コンロ
後ほど紹介する「寸胴」を温めるコンロであり、「直径」や「カロリー(火力)」によって値段が異なります。
基本的に寸胴の数だけ必要。
寸胴
スープを炊くものであり、スープの種類が多いお店であればそれだけ多く必要。
茹で麺機
この写真のように穴が開いてるタイプもあれば、大きな鍋のようなデザインの物も。
写真タイプの物の方が、湯を沸かす効率が良くなります。
餃子焼き機
写真の物で、おおよそ4人前×2=8人前の餃子が焼けます。
自動食洗器
写真のようなタイプと、台下に設置する「アンダーカウンター型」があります。
アンダーカウンター型の場合は食洗器の上を有効活用できますが、腰を曲げて出し入れするため「腰痛の原因」になり得るというデメリットが…。
2層シンク・1層シンク
手洗い用・食器洗い用・仕込み用と、弊社では大きく3つに使い分けています。
縦型冷蔵庫
写真の物は「ビールサーバー型」へと改造していますが、だいたいこのようなイメージの物です。
台下冷蔵庫
「作業台兼冷蔵庫」です。写真は横180cmのタイプ。
冷凍ストッカー
縦型冷凍庫でも良いと思いますが、必要な容量に応じて準備しましょう。
製氷機
浄水器
弊社はやや高価なものを使っておりますが、5万円くらいからあります。(だいたい1年でフィルター交換が必要)
個人的には必ず設置した方が良いと思っています。

「自分がどんな種類のラーメンを作るのか?どんな店の規模を想定しているのか?ラーメンを作るスペースはどれくらいか?」すべてを考えて揃えていきましょう。
また設備によっては「都市ガス」「プロパンガス」の種類も影響しますので、その点も要チェックです。
5.食器・調理道具・備品費
続いては、ラーメン屋を開店・運営していく上で必要な費用です。
項目 |
内容 |
おおよその費用 |
---|---|---|
食器 |
|
60万円ほど |
調理道具 |
|
10万円ほど |
備品消耗品 |
|
3万円ほど |
その他、音響設備やユニフォーム、おしぼりウォーマー、仕事用のノートパソコンなど、もろもろあわせてざっくりと100万円ほど考えておけば良いです。

上で挙げた食器や調理器具、備品は一部です。
提供するラーメン・サイドメニューの種類によっても異なりますが、おおよそ100万円は掛かると思っておいた方が良いです。
6.開業後6か月分の運転資金
ラーメン店開業後は、2か月間ほどオープンラッシュが出来る可能性があるのですが、一般的に3か月目から売上が落ちると言われています。
※「3か月目から落ちてしまう要因」と思われる点については「【悲報】新店オープンで「すぐ行ってみる」人の割合はたった17%!しかも「2度目のチャンス」も極わずか…」内で解説しています
いずれにせよオープン後半年は赤字になる可能性があるという事を肝に銘じ、運転資金は大目に調達しておくのがベター。
なぜなら多少の赤字が続いたとしても、運転資金があれば「挽回のチャンス」を掴めるからです。
余裕をもっていなかった場合は、たとえ評価が良かったとしても口コミが広がる前に資金が底をついてしまい、店を畳まざるを得なくなります。
フランチャイズのようにブランドに知名度がある場合は、最初からある程度の安定した集客が見込めますが、独自ブランドを立ち上げた場合は特に「赤字が続く可能性」を考慮して半年分の運営資金は用意しておきましょう。
仮に「12席のお店で毎日8万円の売上を目標としている」場合には、おおよそ以下ほどを準備しましょう。
項目 |
内容 |
半年間の運転資金 |
---|---|---|
食材費 |
原価率30%と仮定すると、1日2万4000円(8万×30%)。 もしも30日営業であれば72万円。 |
430万円ほど |
光熱費 |
12席ほど(15坪)であれば、だいたい月15万円ほど。 |
90万円ほど |
人件費 |
売上の30%と考えると、食材費と同等。 |
430万円ほど |
なお上の「人件費」には、あなたがお店に入ることは考慮していません。
つまりあなたが「人件費30%のうちの10%」だと考えると、従業員へ支払うべき人件費は20%で済みますので、半年間でおよそ288万円用意しておけばOK。
合計すると半年間の運用資金はおよそ850万円〜1000万円となります。

開業時は「借りられる最大の額」まで借りましょう。
なぜなら、
- 開業時が一番借りやすい
- 必要なければ繰上げ返済ができる
という理由と、上で述べたとおり「軌道に乗せるまでの資金的な忍耐力を付けるため」です。
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これらの費用をまとめると…
では、ここまで挙げてきた6つの開業資金をまとめてみます。
項目 |
内容 |
|
---|---|---|
1 |
物件取得に掛かる費用 |
家賃の6か月〜10か月分くらい |
2 |
内装・外装工事費 |
500〜1000万円 |
3 |
什器費 |
50万円〜 |
4 |
厨房内設備費 |
200〜250万円 |
5 |
食器・調理道具・備品費 |
100万円 |
6 |
開業後6か月分の運転資金 |
850万円〜 |
上の表どおり、
- 開店までに必要な資金
⇒1000万円〜1600万円
- 開店後6か月間の運転資金確保
⇒850〜1000万円
これぐらいが大体の目安となります。

何度もお伝えのとおり、居抜き物件では内外装工事費を抑えられますし、あくまでも超概算であることはご承知置きください。
ただ一つ言えることは、『なんとなく1000万円くらい用意しておけばOK』のような考えだと、開業後に資金枯渇する可能性があるため、運転資金は必ず考慮しておくべきだと私は思います。
開業資金を調達する3つの方法!
ここまでの説明通り、半年間の運転資金の余裕も含めて考えると、ざっと2000万円ほど用意しておくのが理想です。
そこでここからは、ラーメン屋の開業資金を調達するための方法を3通り紹介します。
資金調達する3通りの方法
- 「血縁関係・親族」から調達する
- 「知人」から調達する
- 「日本政策金融公庫」から調達する
もっともシンプルで一般的な方法が、配偶者・親・兄弟・親戚など、親族・血縁関係からお金を調達する方法です。
なぜこの方法を1番に紹介したのかと言うと、この後説明する「日本政策金融金庫からの調達」に影響するため。
「日本政策金融金庫」からお金を借りる際、「自己資金」が多い方が借りられる額が大きくなります。
親族・血縁関係から借りる場合、この「自己資金」の一部として認定されるケースが高いのです。
ただし親戚・血縁関係者からの調達でも、「返済義務がない借入」のみが認定されるため要注意。
そこはたとえ「出世払い」だとしても、借りる相手としっかり相談しましょう。
知人から資金調達するのも一つの方法です。
ただし、先ほど説明した「日本政策金融公庫から調達する際に、自己資金として認定してもらう」ためには、親族から借りるパターンよりもハードルが高くなります。
なぜなら「開業時にお金を一時的に借りて“見せ金”を作り、多くの融資を受けようとする者」が後を絶たないため、審査が厳しくなったからです。
※見せ金・・・融資を受けるタイミングだけお金を借り、その後すぐに借りた相手に返金する
知人から借りたお金も「自己資金」として認めてもらうためには、出資相手の身元確認・贈与契約書などの作成が必要になります。
貯金、そして親族や知人からの調達でも資金が足りない場合は、金融機関からの調達が必要。
その場合に、最も一般的に使われるのが「日本政策金融公庫」です。
その中に色々と融資制度がありますが、多くの方が使うのが以下2つだと思います。
新規開業資金
融資上限が7200万円(うち運転資金が4800万円)であり、自己資金額の条件はありませんが保証人・担保が必要。
新創業融資制度
無担保・無保証人で最大3000万円まで融資してくれる制度。
初めての店舗開業者にとってリスクが少なく、希望者の多い制度です。
制度面で言うと、融資は自己資本の9倍まで借りることが出来るのですが、実際には2〜5倍くらいが多いとされています。
つまり余裕をもって2000万円を用意する場合、自己資本は700万円くらいあるのが安心ですね。
(700万円+700×2の融資=2100万円)
上記以外にも「女性、若者/シニア起業家支援資金」などもあります。
上で挙げた制度の細かい条件などはすべて「日本政策金融公庫のwebサイト」でご確認下さい。
ここまで挙げた方法以外には「地方銀行・信用金庫の制度融資」「助成金・補助金」などがありますが、以下の理由からここでは説明していません。
- 地方銀行・信用金庫の制度融資
⇒担保やこれまでの取引実績がない場合は融資を受けるのが難しい。また飲食店の場合は「営業許可証が発行されていること(つまり開店後)」を条件にしか受けられないことがある。利率など総合的に考えて「日本政策金融公庫」へ借入申請するのが無難。
- 助成金・補助金
⇒独立・開業後1年経たないと利用できない。
まとめ
長くなりましたので、最後にもう一度まとめてみます。
「15坪25万円ほどの物件」を想定してみた時の必要資金としては…
- 開店までに必要な資金
⇒1000万円〜1600万円(居抜きの場合は300万円〜)
- 開店後6か月間の運転資金確保
⇒850〜1000万円
だいたいこんなものでしょう。
1年以内に廃業してしまうラーメン屋の多くは「運転資金の枯渇」です。
特に「独自ブランド」で開業するならば、「知名度が上がり、軌道に乗せるまでの余裕」を持つ意味で、半年間の運転資金は用意しておいた方が良いです。
多く借り入れたとしても不要であれば前倒しで返せますので、最初に最大限借りることをオススメします。
なお、借り入れは「日本政策金融公庫からの調達」が一番無難。
さて今回は「資金」にまつわる話でしたが、以下も目を通して頂けると具体的に「毎月目標とすべき売上」が見えてくるでしょう。
気になる「年収」については以下で解説しています。
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その他、松村の経験から「成功・失敗する要素」もまとめていますので、宜しければこちらもどうぞ。
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